Trivia
職人(畳職人)なので焼き芋の事についても
色々知ってみたく
少し調べてみました。
芋のトリビア(Trivia):雑学にお付き合いください。
焼き芋(さつまいも)の雑学
少し科学的です。サツマイモを科学するコーナー。
焼き芋の甘さ(糖分)
焼き芋の甘さの主は
麦芽糖です。
糖の種類は大雑把に
果糖
ショ糖(砂糖)
ぶどう糖
麦芽糖
などありますが
甘さの強さが違います
果糖 1.5
ショ糖 1.0
ぶどう糖 0.7
麦芽糖 0.3
くらいと言われています。
麦芽糖は他の糖に比べて
それほど甘くはありませんが
優しい甘さで(硬くなりにくく)
冷めても甘みが落ちにくいのは
焼き芋の良さであると思います。
サツマイモの産地
サツマイモといえば鹿児島です。
ですので
千葉県産のサツマイモを使う当店は
こだわりがないのか?
実は
鹿児島はサツマイモの最大産地なのですが
収穫されたそのほとんどが
芋焼酎用のサツマイモだったのです。
実は焼き芋などの
そのまま食べる為のサツマイモの最大産地は
茨城県。
でも茨城県は干し芋用にも多く使われますし
そのまま食べるサツマイモの量であると
千葉県と茨城県は近い量であります。
品種、品質、貯蔵などの研究に関しては
首都圏により近い千葉県の方が
進んでいるようにも感じましたので
当店では千葉県産のサツマイモを
使用する事にしました。
生のサツマイモの貯蔵
サツマイモは貯蔵もとても大事です。
どの焼き芋屋さんでも
自分でサツマイモを育て
収穫、貯蔵をしたのちに焼き芋を
作るお店は少ないと思います。
通常は
生のサツマイモを仕入れて焼く。
という方が多いと思いますので
焼き芋を作るにあたり
大事なのは
仕入れたサツマイモが
どのように管理貯蔵されていた物か
になるかと思います。
調べたところによると
千葉県の香取地域は
その貯蔵管理に対し早くから取り組み
ほぼ1年を通し品質の良い状態の
サツマイモを出荷しているとの事です。
当店では
紅はるか、シルクスイート
に関してはすべて香取産の物を
使用することにしています。
焼き方
オーブン、石焼き、
遠赤外線ヒーター、
などの焼き方が有ります。
科学的に厳密に考えると
サツマイモが美味しい焼き芋
になるための工程、
①糊化
②糖化
の最適な温温度帯に対し
出力調整が細かくできる
遠赤外線ヒーターで焼くのが
一番良いと思われます。
しかしそこまでの焼き芋焼き機
存在していませんので
当店では2段階出力調整のできる
遠赤外線ヒーターを使用しています。
糖度
糖度計。
実はこれは甘さを測れる物ではありません。
砂糖水の各濃度の
光の屈折率と比べて
それとの相関関係にて
糖度と言う形で表現する機械です。
水分に糖分らしいものが入っているとこれくらい光が屈折するので
糖度的にはいくつ。
と表現する機械です。
また
糖の種類による甘味も違います。
砂糖水(ショ糖)30%と焼き芋糖度100%
でもほぼ同じ甘さです。
当店では
焼き芋の美味しさは
甘さだけでなく
食感と甘さとのバランスであると
思っていますので
糖度に関しては表示していません。
貯蔵の奥深さ
サツマイモは焼くことにより
デンプンが麦芽糖に変わります。
基本的には
焼くことで甘くするとしか
思っていない方が
いるかと思います。
お店によって
どれだけデンプンを甘さ(麦芽糖)
に替えるかとなってきますが、
実は
貯蔵中にもデンプンが
少し糖化します。
(焼く時ほどではありませんが)
ただ、
貯蔵中にデンプンは麦芽糖には
あまりならず
ショ糖に変わります。
これによって出来上がる焼き芋の
甘さも絶妙に変わってくることにもなります。
なぜ貯蔵でショ糖に?
元々、芋は葉の光合成で
デンプンを作ります。
それを芋として蓄えます。
そしてその芋が
将来、発芽する時は
デンプンをショ糖に変え
芽を出す栄養にします。
その発芽温度が約17°
芋を騙すわけではないですが
17°のちょっと下の温度
13~15°くらいにすると
芋はほんのちょっとだけ
発芽準備に入ります。
すると
蓄えていたデンプンが
ショ糖に変わってきます。
17°になると発芽してしまう。
9°以下くらいだと腐ってしまいます。
糊化(こか・のりか)
芋を焼く時には
どのような過程を踏むか
①約65°くらいで
デンプンと水分を
ネバネバ(糊化)にする。
②糊化したデンプンを
芋の中に元々ある酵素:
βアミラーゼによって
麦芽糖に変える。
サツマイモとジャガイモ
サツマイモとジャガイモの違い。
ジャガイモは
必ず
休眠期間というのがあり
おおよそその休眠期間は
春を待つ草木の芽のよう。
自然界では
寒さを耐え忍び
暖かくなってきたら芽が出る仕組みで
(温度だけでなくホルモンなども絡んできます。)
収穫すぐには
ほぼ絶対に芽が出ない期間(自家休眠期間)があります。
ですので温度に関しては
最悪、常温でもよく
貯蔵は割と簡単です。
サツマイモには休眠期間というものはなく
寒ければ(約9°以下)腐るし、
暖かくすれば(約17°)芽が出ます。
保存(貯蔵)する為の温度管理は
少し難しいと思います。
サツマイモの仕入れ
昔から焼き芋を商売としてみると
「安く仕入れて高く売る。」
が鉄則です。
これですと
焼き芋屋はかなり儲かる。笑
しかし
どんな野菜でもそうですが
サツマイモに関しても
同じ「紅はるか」とっても
地域が違ったり
生産者が違ったりすると
芋の雰囲気が全然違い
焼くたびに味が変わってしまいます。
もちろん、
B品だったりすると
仕入れると特に形が
ものすごく不揃いになります。
形の不揃いは
焼き上がりのムラにもつながります。
当店はトラックなどで場所を変え
その場限りの販売ではないので
美味しい時不味い時がある不親切があっては
いけないと思います。
できる限り
いつも同じような美味しさにて食べていただきたいと
思っていますので
最低限
産地はいつも同じの
千葉県香取産A品にさせていただいてくことにしました。
ちょっと仕入れ値が高いですが。笑
サツマイモのデンプン
アミロースとアミロペクチン
デンプンの種類です。
植物内のデンプンは
基本的にこの2種類のデンプンが
適当な比率で入っています。
お米に例えると
アミロース 0%
アミロペクチン 100%
これだと
モチモチのもち米です。
アミロース 18%
アミロペクチン 82%
普段食べるお米(うるち米)です。
アミロペクチンの比率が多いと
モチモチ。
アミロースの比率が多いと
パサパサ。
になります。
さつまいもの標準的な
比率は
アミロース 18%
アミロペクチン 82%
です。
焼き芋の最高糖度。
サツマイモのでんぷん質をできる限り
糖化させたいと思った時
科学的見ると
どこまで(何%)
糖化させることが出来るか?
生サツマイモ 100g中
水分 約65%
炭水化物(デンプン、糖質、食物繊維等)
約33%
炭水化物中のほとんどがデンプンです
100g中の炭水化物の内訳
デンプンが10~30g(品種により差があり)
食物繊維 2.5g
糖質 微量
まず
デンプン内(アミロース、アミロペクチン)
の比率は一般的に
アミロース18%
アミロペクチンア82%
このデンプンは
焼くことにより(加熱)
糊化後
サツマイモが本来持っている
βアミラーゼという酵素に
よって糖(麦芽糖)に変わります。
βアミラーゼは
アミロースをほぼ100%糖にしますが
アミロペクチンは約55%しか糖にしません。
(α-1・4-結合 α-1・6結合
などの絡みによる)
よって
最大限上手にデンプン33gを
糖化させた場合その約63%の21g
の糖が生成されます。
水分の蒸発(約10g)などを考えて
21g÷90g=23%の糖度
大目に見ても焼き芋の糖度は30%
くらいが限界なのかと思われます。
サツマイモは
焼いても水分量が50%以上は有るので
それだけ見ても糖度が50%以上ってのは
無理ですね。
遠赤外線
オーブンで焼く。①
と
遠赤外線で焼く。②
焼くではないですが
電子レンジで温める。③
よく、
遠赤外線は芯から温めるから良い。
と言いますが
これは嘘です。遠赤外線と言っても
芯から温めるわけではありません。
大雑把ですが
どのように違うかというと
鍋でお湯を沸かす事を
例えにしてみますと
①
オーブンでは
鍋をガスコンロの炎で温める。
ような感じ。
②
遠赤外線では
IHコンロで鍋自体全体に発熱させて
温める。
ような感じ。
③
電子レンジは鍋の中の水に
マイクロ波を当ててて
水自体から温める。
ような感じ。
ですので
焼き芋だけではないですが
遠赤外線で焼くと
皮自体を発熱させて全体を温めますので
早く焼くことができます。
その他にも利点はあります。
必要以上に熱する必要がないので
焦げにくいです。
理想の焼き方
サツマイモ内のデンプンを加熱し
65°~75°あたりで糊化させる
糊化したデンプンは
βアミラーゼによって糖化する。
でもβアミラーゼは
約85°あたりで失活する。
したがって65〜80℃の温度帯が
なるべく長くなるように加熱すると
βアミラーゼが最大限にはたらき、
甘味の強い仕上がりにすることができる。
しかし
だからと言って
だらだらとサツマイモを65°付近に
しておこうとして
60°弱くらいになってしまっていると
ペクチンの硬化(約50°~60°)
により
パサパサになってしまう。
温めすぎて85°をすぐ過ぎてしまうと
甘くならず、
だらだらと温めるとパサパサになる。
パサパサになっても最後に
サツマイモ全体を上手に
100°近くまで上げてあげれば
再び
ペクチンの軟化が起き柔らかくは
なるかと思いますが
100°以上で温めてしまうと今度は
水分が蒸発してパサパサに
なります。
焼き芋を焼くのは難しいですね。
含まれる酵素
野菜は各々、
中に酵素を持っています。
酵素の種類も野菜によって違いがあり
パパイヤならパパイン
大根ならアミラーゼ
トウモロコシならリパーゼ
玉ねぎならプロテアーゼ
など
またその含む酵素の量も
野菜によって変わります。
ジャガイモとサツマイモ。
両方アミラーゼと言う
デンプン分解酵素が含まれますが
ジャガイモには少ししか含まれず
サツマイモは多く含まれます。
デンプンを多く含み
アミラーゼも多く含む
野菜を温める加工をすると
甘い野菜になります。
これを満たす有名な野菜が
サツマイモになります。
サトウキビはなぜ甘い?
野菜の中には
砂糖のような甘さの有るものが
有ります。
その代表格が
サトウキビやサトウダイコン。
植物は
基本的に光合成によって
デンプンを作るのですが
茎を通るときは水に溶けやすい
ショ糖などに変え
貯蔵するにはデンプンに
変化させることが多いです。
デンプンになると甘さはなくなります。
デンプンに変換させずに
ショ糖のまま
茎や根に貯蔵する代表的な野菜が
サトウキビとサトウダイコン
になります。
サツマイモの1年
サツマイモは通常
秋に一気に畑から収穫して
貯蔵しながら
随時選別して出荷していきます。
貯蔵がしっかりしていると
出始めのよりも最後の時期
3月~7月が
実は一番おいしくなっています。
そして秋。
新芋の時期になります。
実は出始めは一番おいしくないので、
昨年の最後の美味しい芋を食べたのち
秋に新芋の焼き芋を食べると
「あれ?前のよりあまり美味しくない?」
となってしまう可能性があります。
とても難しいですね。
ですので
お店によっては
美味しい時期のサツマイモを
焼き芋にして冷凍し
1年を通して同じ味にて提供する。
という方法をとっている場合も有ります。
デンプンはなぜ甘くない?
デンプンも実は糖から出来ています。
でも甘くありません。
なんで
デンプンは甘くないの?
それは
デンプンは(分子構造上で)
糖が長く結びついているから〜
(チコちゃん風)
例えば
ショ糖は糖の分子 2個単位で存在する物。
デンプンは糖の分子 10000個繋がった単位で存在する物。
ショ糖の分子構造はこんな感じ
糖-糖
デンプンの分子構造はこんな感じ
糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-・・・・・・・・-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖
人間の舌は
食べ物の分子の端っこの部分しか甘さを感じる事が出来ません。ですので
ショ糖であれば
糖-糖
デンプンであれば
糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-・・・・・・・・-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖-糖
赤い部分しか甘さを感じる事が出来ません。
ショ糖とデンプンを分子量的に
同じ量
糖の分子10000個分であれば
ショ糖なら10000個全部甘さを感じますが
デンプンだと2個分しか甘さを感じません。
ですので
デンプンは甘く感じないのです。
これがアミラーゼによって
細かく分解されると甘く感じる端っこが
増える事となり甘く感じるようになります。